心の3層構造
人の心は三層で成り立っている
─頭(観念)の層、その奥の潜在意識の層─
「思おう、思おう」としても「そう思えない心」が出てしまう……。
「本音」と「建前」という言葉がありますね。
この「本音」と「建前」を意識して本当に思っている思い=本音を理性で隠し、建前で相手に接したり話たりした経験は誰しもあるでしょう。
また、それとは逆に頭ではわかっていても、どうしてもそう思えない心が湧き上がってしまった経験もあると思います。
「感謝しろと言われたって、そう思えない」
「前向きに考えることが大事なことなんて、わかっているけど、不安が消えない」
「愛の心をもって接したいけど、どうしても許せない」
「自分の感情がすべてを引き寄せるのだから、よい感情を持ちたい……、でもできない」
実は私たちの心には「思おう」とする前に「すでに思っている心(そう思えない心)」があるのです。
それが心に深く定着しています。そして「すでに思っている心(そう思えない心)」はもともと定着していますから、後から「思おう」としてインプットした思いよりも圧倒的に強いのです。
心にもともと定着している「すでに思っている心」は、強力ゆえにほんのわずかなきっかけでも表面に出てきてしまい、たとえ理性でその気持ちを抑えていても、強力ですから体の変化や行動の変化にまで影響を及ぼしてしまいます。
その「すでに思っている心」とは一体何なのでしょう。それを含め、私がとらえている人間の「心の三層構造」についてお伝えします。
まず、先ほどから述べているプラス思考をインプットしていた頭(観念)の部分のことを私は「心の第一層」としています。
つまり心の一番浅い、表面の層です。ここは本や勉強などで得たものが入る、インプットされる部分です。言い換えれば「知識の記憶」の層です。
また別の言い方では「顕在意識」、それは私たちが普段、意識的・自覚的に認識できる心・記憶の層です。
そして、ふと力を抜いたときに湧き上がってくる強力な「すでに思っている心」は、その「心の第一層」の奥にあります。
私はそれを「心の第二層」としています。別の言い方では「潜在意識」と言われる部分です。
心の第二層=潜在意識は、意識的・自覚的には認識できない心・記憶の層です。
そこにはあなたの過去の膨大な記憶が蓄積されています。
先に述べた遺伝子(DNA)の記憶、前世の記憶=宗教的には因縁といわれる記憶、さらにあなたが生まれてからこれまで経験して細胞レベルに刻まれてきた体感と感情の「細胞の記憶」も含まれています。
それを別の言い方では「業」や「カルマ」と言います。それらは「記憶しよう」と意識しなくても無意識のうちに蓄積されているのです。
この業・カルマという潜在意識の記憶は、その記憶が刻み込まれたときに体験したことと似たような状況が目の前の外界(心という内界に対し、目に見える外側の世界)に現れたとき、その影響によって、心の第一層を突き抜けて心や体に湧き上がってくる形で一瞬にして現れます。
「心の第一層」=頭にプラス思考をインプットしたり、「思おう、思おう」としていても、この第二層の記憶は先述しているようにもともと定着していた心で、格段に強力です。
幼いころ父親に厳しく育てられて「いつも叱られていた」という苦い記憶(マイナス的な記憶)が刻まれている人の場合を例にすると、会社の上司など自分の父親と同年代の人を見る度に「父親に叱られていた」過去の記憶がよみがえり、なぜか上司の前では叱られてしまう行動を繰り返してしまったり、「叱られないようにしよう」と過度に意識して行動がおかしくなってしまったりという具合に表面化するのです。
幼いころの父親のことが原因だとわかり、落ち着いて思い直してみても、心に深く刻み込まれた潜在意識の記憶のその強さにはかないません。
父親に似た人の前ではどうしてもいつもと違う状態になってしまったりするのです。
この反応は、ほとんどが自動的に無意識のうちに起こります。
このような心の第二層(潜在意識)に刻み込まれたマイナス的な記憶は、心の傷、トラウマとなっている場合もあり、日常における行動や生活に影響を与えたりするのです。
補足ですが、潜在意識には良い記憶(プラス的な記憶)ももちろん蓄積されています。
あなたが日常的に意識している心とは、実は非常に表面的な浅い部分の心(心の第一層)です。
この表面の心も目の前の出来事や結果に対しての影響を受けて反応しますが、その奥にある心の第二層(業・カルマ・因縁・潜在意識)こそが、普段の自分では意識することがほとんどないものの、あなたの心を事実上支配し、さまざまな行動や判断する上での基準になっていたり、また外界などからの何かのきっかけで感情や思いを自動的に浮かび上がらせているものなのです。
言い換えれば、日々の生活……大きくとらえるとあなたの人生は、無意識のうちにその心に左右されているともいえるのです。
人生を左右し、苦しみの原因、苦しみを生み出す根本ともいえる心の第二層をどうすれば幸せな、より良いものにできるのか……。
その術が、本編で説明する─「真我」を開く、真我に目覚めることなのです。