暗示の弊害
「私はお金持ちになる……お金持ちになる……」
こんな自己暗示をかけて、お金を手にしようと真剣になっている人がいます。
こういう手法は、一般的にアファメーションとかイメージトレーニングといわれています。
「必ず私にはできる!」とか「やるぞ、やるぞ!」というように自分に繰り返し言って、自己暗示をかける方法がアファーメーションで、自分が目標を達成した姿をイメージするのがイメージトレーニングです。
私も、そういうことを散々やった時期はありました。
しかし、事実上、良かれと思って行うこれらの方法には弊害があるのです。
アファーメーションにもある程度の効果があるのは事実です。
しかし、アファーメーションは「自己暗示」です。
「暗示」という字の如く、まさに実体がないのです。
「暗示」というのは、催眠術と同じなので、事実とは違うのです。
目の前にあるイミテーションのダイヤモンドを、自己暗示によって本物のダイヤモンドに変えることはできません。
事実を見ていくことが大事なのです。
自己暗示は事実を見ていないのです。
長年生きてきた体験や経験の中で「自分には無理だ」と思っている人に、「できる、できる!」と何度頭に言い聞かせてみても、それではできるわけがないのです。
今までの体験をどう受け止めるかという、過去の体験への思いを変えていかなければいけないのです。
「あれは失敗だと思っていたけど、本当は違うんだ。あのことによって、いろんな学びがあったんだ!」と。
失敗だと思っていたことが、実は全部成功だったのだということに目覚めた時、本当の自信になるのです。
毎朝毎晩、アファメーションをしても、部屋中の壁に言葉を貼っておいても、どんなに徹底して自己暗示をしても、変わるのはほんの一瞬に過ぎないのです。
暗示によって永続的に変わった人を、私は今までただ一人も見たことがありません。
従来の成功法則では、そうやってみんな成功していると言っていますが、それは成功した人を調べたからです。
成功した人たちの表面を見ているのに過ぎないのであって、その人がどういう生い立ちで、どういう生き方で、ということはそれほど調べていないのです。
形だけを見ているのです。
ごくごくわずかの大成功者だけを調べた結果なのです。
そういうごく一部の人だけの共通点であって、一般の人には全然通用しません。
こんな方法を勉強したら、普通の人は却って混乱してしまいます。
そもそも従来の成功法則では、成功というものを、人間としてどう生きるのかという観点で捉えていません。
命というスケールでは観ていないのです。
一種のゲームのような捉え方をしています。
ですから、あくまでもノウハウなのです。
しかし、たとえ人生をゲームとして捉えたとしても、私から見たら、そのゲームさえこの方法では成功していません。
なぜなら、これを勉強したら成功すると、ほとんどの人が錯覚してしまうからです。
錯覚してしまって、今自分がやらなければならない大事なことをやっていない可能性があるのです。
なぜ、この方法がほとんどの人に当てはまらないかというと、過去の人生経験がみんなそれぞれ違うからです。
育ってきた環境も遺伝子も、何もかもが違う人が、彼らと同じようにやっても成功できるわけがないのです。
暗示はインプットです。
インプットするのではなく、本来あるものをアウトプットしていかなければ、事実は見えなくなります。
インプットして「できると思おう!」とするのではなく、自然と湧き上がってくる思いをさらに放出していくのです。
その自然に湧き上がってくる心には、もともと人間の誰もが求めている{誠意|まごころ}があるのです。
暗示で上っ面だけの誠意(まごころ)を言い聞かせなくとも、もともとある誠意(まごころ)をそのまま出していけばよいのです。